この問題でおさえておきたいこと
先進国には少産少死で少子高齢化社会、発展途上国には多産少死で人口爆発という問題があることをおさえる!
人口についての各国の課題も確認しよう!
解答(例)
Aが中国、Bがインド、Cが日本である。AとBはいずれも発展途上国の特徴である多産少死型の人口構成を示す富士山型の様相を呈している。だが、Aは10代後半から20代前半の人口割合が小さく、これは1980年代に進められた一人っ子政策による影響だと考えられる。その下の世代が再び増えたのは、将来の少子高齢化を懸念し、規制が緩和されたためである。Bは全体的に多産傾向が改まっておらず、これにより、子孫繁栄を願うヒンドゥー教の考え方や子どもを貴重な労働力とみなす考え方が背景にあるために、人口抑制策があまり機能していないことがうかがえる。Cは先進国の特徴である少産少死型の人口構成を示すつぼ型の様相を呈している。そして、中高年の人口割合が大きく、少子高齢化を反映している。また、50代前半と20代後半の人口割合が特に大きくなっているが、これは戦後まもないベビーブームに生まれた世代とその子どもの世代にあたるためである。(397字)
※アルファベットや数字は2文字以下を1文字とカウントしています。
解説
まず、Cだけがつぼ型の形をしていることから、Cが日本だと判断できます。そして、日本の人口構成の特徴として、判断根拠と少子高齢化社会であることを挙げるとよいでしょう。
残りの中国とインドですが、そこで人口問題のキーワードとして浮かぶのが、1980年代から導入された中国の一人っ子政策でしょう。中国のグラフは1997年のものだと問題文にありますから、10代後半~20代前半のあたりの人口を判断の根拠の材料とすることができます。
ですから、Aを中国として、その判断の根拠である一人っ子政策について触れるとよいでしょう。残りのBがインドですが、人口構成の特徴としては、発展途上国の人口構成のパターンである富士山型の形になっていることを記述することができます。
ただし、おそらくこれらだけでは400字という字数に全然足りないことになると思うので、各国の人口構成についてもう少し特徴の説明を加えるといいでしょう。各国の特徴はこのようなものがあります。
- 日本…ベビーブームがあったため、その年代の人口(50代前半・20代後半)の割合が大きい
- 中国…一人っ子政策による急速な人口減少により、規制が緩和され、10代前半以下では人口が少し増加
- インド…経済の発展や「新家族計画」により、1990年代に生まれた世代の人口が減少
字数との関係を見て調節しながら、取捨選択して特徴を盛り込みましょう。
解答のチェックポイント
- Aが中国、Bがインド、Cが日本の人口ピラミッドであることを指摘しているか
- 中国の人口構成の特徴として、10代後半~20代前半の人口が少ないことを述べているか
- 中国の10代後半~20代前半の人口が少ない理由として、一人っ子政策を挙げているか
- インドの人口構成の特徴として、発展途上国の特徴である多産少死型の人口構成(富士山型の人口ピラミッド)であることを述べているか
- インドが多産少死型社会である理由についてふれているか
- 日本だけがつぼ型の人口ピラミッドになっていることについてふれているか
- 日本の人口ピラミッドだけ形が違う理由として、日本は少子高齢化社会であることについてふれているか
- 日本のベビーブーム、中国の一人っ子政策の緩和、インドの1990年代生まれの人口減少のうちの、どれかにふれているか
ポイントのまとめ
人口構成のパターン
縦軸に年齢をとり、その軸を中心として左側に男性、右側に女性の人口の数や割合を棒グラフにあらわした人口ピラミッドという図で表した場合の型で考えてみると…
- 富士山型(ピラミッド型)…
年齢が若くなるほど人口が増えている=出生率が高く、人口が増えていっている傾向をあらわす
(アフリカや中南米などの発展途上国に多い) - つり鐘型…
中年層の人口の割合と若年層の割合と大差がない=出生率低下で人口が停滞していく傾向をあらわす
(先進国に多い) - つぼ型…
つり鐘型より若年層の割合が少なく、老年人口が多い=高齢化社会で人口が減っていく傾向をあらわす
(日本やヨーロッパ一部先進国にみられる) - 星型…
15~64歳の人口(生産年齢人口)がとくに多く、その他の年齢層の人口が少ない
(人口の流入が多い都市部にみられる) - ひょうたん型…
星型の逆で、老年層や幼少年層がとくに多い
(人口の流出が多い農村部にみられる)
発展途上国の人口問題
もともと子どもを多く持とうとする社会のうえに、医療の進歩による死亡率低下
↓
多産少死型社会(だから人口ピラミッドは富士山型)
人口爆発(人口がいっきに急増)
※発展途上国で子どもを多く持とうとすることについては、子どもを労働力とみなす考え方がある一方で乳児死亡率が高いこと、子どもを多く持つことを善とする思想があること、産業が発達したことなどが背景にあります。
発展途上国の実際例
1.中国
中華人民共和国成立後は、国力増強のため、人口を増やすことが目指された
↓
人口が増えすぎたため、1970年代から晩婚・晩産を奨励するなど人口抑制政策を開始
↓
1980年代から一人っ子政策を開始
↓
急速な高齢化の進行、2人目以降の戸籍をもたない子ども(黒孩子)の増加などの弊害
2.インド
インドでも、子どもは宝(多子多福)というヒンドゥー教の考えや、労働力を必要とする事情から多産社会に
↓
人口抑制政策の実施、強制的措置も
↓
国民の反発により中止
↓
増加する人口に対応するための食糧増産(緑の革命)
先進国の人口問題
医療の発達で死亡率は低いが、女性の晩婚化や価値観の多様化、家族計画の普及などにより出生率は減少
↓
少産少死型社会(だから人口ピラミッドはつり鐘型やつぼ型)
労働力不足の問題、年金などの福祉制度をどうするかの問題
先進国の実際例
1.スウェーデン
出生率低下の対策として児童福祉サービスを充実(例:育児休暇の整備、出産費用の無償化など)
⇔それを支えるために税金などの高負担
2.ドイツ
労働力不足を補うために外国人労働者(ガストアルバイター)を受け入れ
↓
外国人との間の摩擦が顕在化、ときに外国人排斥の考えが生じることも
3.日本
第1次ベビーブーム(1947年~1949年)・第2次ベビーブーム(1970年代前半)でとくに出生率が高い
1970年代までは多産化の傾向
↓
その後は出生率が低下、高齢化が急速に進行
(高齢化のスピードはほかの先進国よりも早い)
↓
年金制度改革や介護保険の導入など福祉制度改革がなされるも、出生率改善にはいまだ至っていない