この問題のポイント
放出された電子のエネルギーは振動数に比例し、プランク定数や仕事関数を使った式にするとhν-Wと表せる!
(1)ア 金属板に光を当てたとき、金属板から電子が飛び出す現象を光電効果といい、飛び出した電子を光電子といいます。この光電子のことについて考えていく問題ですね。
図2より、電流の強さは$I_m$で一定になっています。電流は1秒間に通過する電気量のことを示します。
$e$は電子1個の電気量の大きさを示しているわけなので、1秒間あたり放出される電子の個数は\( \displaystyle \frac{I_m}{e} \)個です。
イ PK間の電位差が$-V_0$ですから、たとえば金属板Kの電位が0ならば電極Pの電位は$-V_0$とおけます。電極Pの電位が負になると、負の電気を帯びた光電子は金属板から電極に向かいにくくなります。負の電位が高くなると、光電子は電極にますます向かいづらくなります。
図2では、電位差が$-V_0$のときにはじめて電流が流れなくなっていますが、これは金属板から飛び出した速度が一番大きい電子でさえ、電極にぎりぎり届かなかったということです。このときの電圧を阻止電圧といいます。
ということは、その速度が一番大きい電子が運動エネルギーが最大ということになり、力学的エネルギー保存に注目して考えると、その電子の運動エネルギーは、金属板においての電極に向かう位置エネルギーと等しいということになります。2つの間の電位差は$-V_0$で、電子は$-e$の電荷を持っていますから、求める値は
\( -e・(-V_0) = eV_0 \)
(2)ウ 金属板から光電子を飛び出させるには、金属板を構成する原子において原子核からの引力をふりほどく必要があり、そのためのエネルギーが必要です。そのエネルギーを仕事関数といいます。
さて、金属板に光をあてると電子が飛び出す現象について、アインシュタインは、光は単なる波ではなくたくさんの粒の流れでもあると考えました。その粒を光子といい、その光子1個のエネルギーは光の振動数に比例するので、比例定数$h$を用いると次の公式が成り立ちます。
光子1個のエネルギー
光子1個のエネルギーを$E$[J]とおくと、振動数が$ν$[Hz]ならば、
\( E = hν \)
この光子が金属板にあたると、そのエネルギーが、原子核による引力から電子をふりほどくことと、ふりほどかれた電子が受け取って速さを持つことに使われるわけですね。よって、次の公式が成り立つこととなります。
光子のエネルギー収支
仕事関数を$W$、電子の運動エネルギーの最大値を$K_M$とすると、
\( hν = K_M+W \)
この公式と、(1)のイで求めたものを使うと\( hν = eV_0+W \)…①が成り立ちます。ここで、図3にて\( V_0 = aν-b \)…②という式があるので、①の式も$V_0 = …$の形にすると、
\( eV_0 = hν-W \)
\( \displaystyle V_0 = \frac{h}{e}ν-\frac{W}{e} \)…③
②の式と③の式の係数を比較すると、
\( \displaystyle \frac{W}{e} = b \)
\( ∴W = eb \)
エ さっきの解説で「光子1個のエネルギー」の公式を説明したとき、$h$という比例定数がありました。この比例定数がプランク定数です。ということは、ウの問題では仕事関数なので$W$について考えましたが、ここではプランク定数ですから$h$について考えればいいということになります。
さっきのウの問題で考えたときと同じように、②の式と③の式の係数を比較して、
\( \displaystyle \frac{h}{e} = a \)
\( ∴h = ea \)
ちなみに、プランク定数の値は決まっていて、\( h = 6.6×10^{-34} \)[J・s]です。
(3) 光子1個が金属板にあたると電子1個が飛び出るエネルギーに使われます。飛び出た電子1個が持つ運動エネルギーは(1)で考えたとおり、$eV_0$です。そして、(2)で考えたとおり、\( W = eb \)です。光子のエネルギー収支の公式より、光子1個のエネルギーを$E$とすると、
\( E = eV_0+W \)
\( = eV_0+eb \)
\( = e(V_0+b) \)
答え.
(1)
ア \( \displaystyle \frac{I_m}{e} \)
イ \( eV_0 \)
(2)
ウ \( eb \)
エ \( ea \)
(3)
\( e(V_0+b) \)