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この問題のポイント

実効値、インダクタンス、インピーダンスなどの意味を理解しよう!
電荷や電流を仮定し、オームの法則を使って抵抗にある未知数を考えていくのが回路問題での基本!

1.実効値とは、抵抗器に交流を流したときに消費される電力が平均値をとる瞬間の電圧や電流の値のことです。ちょっとわかりにくい説明ですが、要するに直流に換算するとこれぐらいの電圧や電流になるだろうという値のことです。

この実効値については、次の公式で求めることができます。

電流の実効値を$I_e$、電圧の実効値を$V_e$とすると、

\( \displaystyle I_e = \frac{I_0}{\sqrt{2}} \),\( \displaystyle V_e = \frac{V_0}{\sqrt{2}} \)
ちなみに、$I_0$,$V_0$は電流、電圧の最大値

よって、この公式にあるとおり、求める\( \displaystyle I_e = \frac{I_0}{\sqrt{2}} \)とわかります。

2.オームの法則を利用して、
\( V_R = RI = RI_0\sin{ωt} \)

$V_L$や$V_C$についても同じやり方で求めていくことができればいいですよね?そこで利用できるものがリアクタンスです。リアクタンスとは、コイルやコンデンサーにおける、電圧と電流の比率を決めるもののことで、言いかえれば抵抗と同じような概念のものだと理解してOKです。

まず、コイルについて考えてみましょう。コイルのリアクタンス$X_L$は、
\( X_L = ωL \)
とあらわすことができるので、これを抵抗のように使います。

そして、コイルを流れる交流は電圧の位相のほうが電流の位相よりも\( \displaystyle \frac{π}{2} \)進むことも注意してオームの法則を利用すると、

\( \displaystyle V_L = ωL・I_0\sin{\left(ωt+\frac{π}{2}\right)} = ωI_0L\cos{ωt} \)
(三角比の\( \displaystyle \sin{\left(θ+\frac{π}{2}\right)} = \cosθ \)という性質を使って変形しています)

次に、コンデンサーについて考えてみましょう。コンデンサーのリアクタンス$X_C$は、
\( \displaystyle X_C = \frac{1}{ωC} \)
とあらわすことができるので、これを抵抗のように使います。

そして、コンデンサーを流れる交流は電圧の位相のほうが電流の位相よりも\( \displaystyle \frac{π}{2} \)遅いことも注意してオームの法則を利用すると、

\( \displaystyle V_C = \frac{1}{ωC}・I_0\sin{\left(ωt-\frac{π}{2}\right)} = -\frac{I_0}{ωC}\cos{ωt} \)
(三角比の\( \displaystyle \sin{\left(θ-\frac{π}{2}\right)} = -\cosθ \)という性質を使って変形しています)

3.さっきの2.の問題で$V_L$や$V_C$の解答で\( \cosθ \)があったので、これが使えないかと考えてみましょう。この問題の回路では抵抗器とコイルとコンデンサーが直列につながっています。直列なので、それぞれの部分における電圧をたすと電源電圧と等しくなるので、

\begin{eqnarray} &&V = V_R+V_L+V_C\\ &&= RI_0\sin{ωt}+ωI_0L\cos{ωt}-\frac{I_0}{ωC}\cos{ωt}\\ &&= I_0\left(R\sin{ωt}+ωL\cos{ωt}-\frac{1}{ωC}\cos{ωt}\right)\\ &&= I_0\left\{R\sin{ωt}+\left(ωL-\frac{1}{ωC}\right)\cos{ωt}\right\} \end{eqnarray}

\( \displaystyle ωL-\frac{1}{ωC} = A \)とおくと、

\begin{eqnarray} &&V = I_0(R\sin{ωt}+A\cos{ωt})\\ &&= I_0\sqrt{R^2+A^2}\left(\frac{R}{\sqrt{R^2+A^2}}\sin{ωt}\right.\\ &&~~~~\left.+\frac{A}{\sqrt{R^2+A^2}}\cos{ωt}\right) \end{eqnarray}

この式は、
\( \displaystyle \cosθ = \frac{R}{\sqrt{R^2+A^2}} \),\( \displaystyle \sinθ = \frac{A}{\sqrt{R^2+A^2}} \)
となる角$θ$を用いれば、問題文で「用いてもよい」与えられた公式を利用して
\( V = I_0\sqrt{R^2+A^2}\sin{(ωt+θ)} \) …①とできます。

\( \displaystyle ∴\cosθ = \frac{R}{\sqrt{R^2+A^2}} \)
$A$をもとにもどして、
\( \displaystyle \cosθ = \frac{R}{\displaystyle\sqrt{R^2+\left(ωL-\frac{1}{ωC}\right)^2}} \)

4.①の式より、\( \sin{(ωt+θ)} \)の値が1になれば$V$は最大となります($x$がどのような角度であっても必ず\( -1≦\sin{x}≦1 \)なので)。よって、
\( \displaystyle V_0 = I_0\sqrt{R^2+\left(ωL-\frac{1}{ωC}\right)^2} \)

そして、1.で解説したとおり、実効値は最大値の\( \displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}} \)倍なので、
\( \displaystyle V_e = \frac{V_0}{\sqrt{2}} \)
\( \displaystyle = \frac{I_0}{\sqrt{2}}\sqrt{R^2+\left(ωL-\frac{1}{ωC}\right)^2} \)

5.インピーダンスとは、回路における電圧と電流の比率を決めるもの、電流の流れにくさを表すもののことです。さっきのリアクタンスの説明とほぼ同じことからわかるとおり、インピーダンスも抵抗と同じような概念のものと理解してOKです。

そのことから考えると、オームの法則より、\( V_0 = ZI_0 \)
4.で求めたV_0も利用すると、
\( \displaystyle Z = \frac{V_0}{I_0} = \sqrt{R^2+\left(ωL-\frac{1}{ωC}\right)^2} \)

しかし、この問題では、$Z$は$R$,\( \cosθ \)を使って表さないといけません。\( \cosθ \)は3.で求めましたから、それが使えないかを考えましょう。

\( \displaystyle \cosθ = \frac{R}{\displaystyle\sqrt{R^2+\left(ωL-\frac{1}{ωC}\right)^2}} \)なので、
\( \displaystyle \sqrt{R^2+\left(ωL-\frac{1}{ωC}\right)^2} = \frac{R}{\cosθ} \)
\( \displaystyle ∴Z = \frac{R}{\cosθ} \)

6.さっきの4.で求めたV_eの式で、このV_eが定数だとすると、\( \displaystyle \sqrt{R^2+\left(ωL-\frac{1}{ωC}\right)^2} \)が最小となれば、$I_0$が最大になり、大きな電流が流れるようになります。なので、\( \displaystyle \sqrt{R^2+\left(ωL-\frac{1}{ωC}\right)^2} \)が最小となる条件を考えます。

\( \displaystyle \sqrt{R^2+\left(ωL-\frac{1}{ωC}\right)^2} \)が最小となるには、\( \displaystyle R^2+\left(ωL-\frac{1}{ωC}\right)^2 \)ができるだけ小さい数になればいいですね。ただし、$R$は定数ですから、\( \displaystyle ωL-\frac{1}{ωC} = 0 \)となればいいことになります。

\begin{eqnarray} &&∴ωL = \frac{1}{ωC}\\ &&ω^2LC = 1\\ &&ω = \frac{1}{\sqrt{LC}}\\ \end{eqnarray}

$ω$は角周波数のことでしたが、角周波数の公式\( \displaystyle ω = 2πf_0 \)より、
\( \displaystyle \frac{1}{\sqrt{LC}} = 2πf_0 \)
\( \displaystyle ∴f_0 = \frac{1}{2π\sqrt{LC}} \)

そして、このときの電流が流れることを共振といいます。

答え.
1.\( \displaystyle I_e = \frac{I_0}{\sqrt{2}} \)
2.\( V_R = RI_0\sin{ωt} \),\( V_L = ωI_0L\cos{ωt} \),\( \displaystyle V_C = -\frac{I_0}{ωC}\cos{ωt} \)
3.\( \displaystyle \cosθ = \frac{R}{\displaystyle\sqrt{R^2+\left(ωL-\frac{1}{ωC}\right)^2}} \)
4.\( \displaystyle V_0 = I_0\sqrt{R^2+\left(ωL-\frac{1}{ωC}\right)^2} \),\( \displaystyle V_e = \frac{I_0}{\sqrt{2}}\sqrt{R^2+\left(ωL-\frac{1}{ωC}\right)^2} \)
5.\( \displaystyle Z = \frac{R}{\cosθ} \)
6.現象名は共振、周波数は\( \displaystyle f_0 = \frac{1}{2π\sqrt{LC}} \)