この問題のポイント
斜め方向に向かう運動は、水平方向の運動と鉛直方向の運動に分解して考える!
(1) 球Aも球Bも斜め方向に向かって運動していますが、斜め方向の運動についての公式はないので、運動方向を水平方向と鉛直方向に分解して考える必要があります。そうすれば、水平方向については等速度運動、鉛直方向については鉛直投げ上げ(鉛直投げ下ろし)運動として考えてその公式を使えるからです。
「球Aが衝突前に最高点に到達した」ということについては、鉛直投げ上げ運動で考えれば、最高点に達して速度が0になり、そこから自由落下に切り替わるということです。つまり、「球Aが鉛直投げ上げ運動では速度0になった」と考えることができます。それをもとに、下の鉛直投げ上げ運動の公式を使います。
速度を$v$、高さを$y$、初速度を$v_0$、時間を$t$、重力加速度を$g$とすると、
\( v = v_0-gt \)
\( \displaystyle y = v_0t-\frac{1}{2}gt^2 \)
\( v^2-{v_0}^2 = -2gy \)
まず、(ア)の時刻ですが、これは上にある最初の公式を使っていくほうが簡単でしょう。求める時刻を$t_1$とします。
初速度ですが、速さ$V$で球Aは投射されましたが、それは斜め方向の速度であって鉛直方向の速さではありません。なので、斜め方向の力を分解して鉛直方向の力の速さを求めなければいけません。角度は右側上方45°なので、鉛直方向は\( V\sin45° \)となりますので、公式を利用すると、
\( 0 = V\sin45°-gt_1 \)
\( \displaystyle gt_1 = \frac{V}{\sqrt{2}} \)
\( \displaystyle ∴t_1 = \frac{V}{\sqrt{2}g} \)
次に、(イ)の時刻ですが、これはさっきの公式のなかで2番目の公式を使っても求まりますが、最後の公式を使ったほうが計算が簡単です。求める高さを$y_1$とすると、
\( 0^2-(V\sin45°)^2 = -2gy_1 \)
\( \displaystyle -\frac{V^2}{2} = -2gy_1 \)
\( \displaystyle 2gy_1 = \frac{V^2}{2} \)
\( \displaystyle ∴y_1 = \frac{V^2}{4g} \)
(2) 球Bの投射時刻を$t_2$、衝突時刻を$T$とおきます。2つの球が衝突したということは、そのときの球Aと球Bの$x$座標・$y$座標が同じになったということになります。
どちらで考えてもいいんですが、$x$座標のほうで考えたほうが計算が簡単でしょう。斜め方向の運動を分解して水平方向の運動を考えると、それは等速度運動ということで下の公式が使えるからです。
速度を$v$、距離を$x$、時間を$t$とすると、
\( \displaystyle v = \frac{x}{t} \)(つまり、距離÷時間)
\( x = vt \)(つまり、速さ×時間)
これを使って考えると、球Aが$x$軸方向に$T$(=衝突するまでの間の時間)進んだ距離と、球Bが$x$軸方向に$T-t_2$(=球Bが投射されて衝突するまでの間の時間)進んだ距離が等しいんですから、2番目の公式を使えばいいということになります。
ただし、(1)と同じように、速さ$V$というのは斜め方向の速度なので、分解して水平方向の速さを求めないといけないことに注意です。角度は右側上方45°なので、水平方向は\( V\cos45° \)となるので、
Aの進んだ距離…\( V\cos45°T \)
Bの進んだ距離…$l$だけ右方向にずれているので\( l+V\cos45°(T-t_2) \)
この2つが等しいので、
\( V\cos45°T = l+V\cos45°(T-t_2) \)
\( V\cos45°T = l+V\cos45°T-V\cos45°t_2 \)
\( V\cos45°t_2 = l \)
\( \displaystyle \frac{V}{\sqrt{2}}t_2 = l \)
\( \displaystyle ∴t_2 = \frac{\sqrt{2}l}{V} \)
(3) 球Aも球Bも同じ高さのところから同じ方向に同じ速さで投射されましたから、投射時の運動エネルギーと位置エネルギーは同じです。
そして、衝突する直前も位置は同じところなので、そのときの位置エネルギーも同じです。よって、力学的エネルギー保存の法則(位置エネルギーと運動エネルギーの和は一定)より、衝突する直前の運動エネルギーは同じです。
(4) (2)で$T$とおいたものを求める問題です。衝突直前の球A,球Bにおける鉛直方向の速度をそれぞれ$V_a$,$V_b$とおきます。すると、(1)と同じように考えると、
$V_a$
\( = V\sin45°-gT \)
\( \displaystyle = \frac{1}{\sqrt{2}}V-gT \)
$V_b$
\( = V\sin45°-g(T-t_2) \)
\( \displaystyle = \frac{1}{\sqrt{2}}V-g(T-t_2) \)
なぜ、これを求めたかというと、(3)で求めたとおり、運動エネルギーは球Aと球Bで同じで、どっちの球も水平方向の速度は等しいので、ここで求めた鉛直方向の速度も等しくなるはずだからです。それを手がかりに$T$を求めることができるわけですね。
ただし、2つの球が衝突したということは、球Aは最高点に達した後に下降していて、球Bは上昇を続けていたという状況だったことです。つまり、2つの鉛直方向の速度は単にイコールの関係ではなく、\( V_b = -V_a \)という関係だということですね。
よって、\( \displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}V-g(T-t_2) = -\frac{1}{\sqrt{2}}V+gT \)
\( \displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}V-gT+gt_2 = -\frac{1}{\sqrt{2}}V+gT \)
\( \displaystyle 2gT = \frac{2}{\sqrt{2}}V+gt_2 \)
なので、\( 2gT = \sqrt{2}V+gt_2 \)となりますが、ここで(2)で求めた$t_2$の式を代入すると、
\( \displaystyle 2gT = \sqrt{2}V+\frac{\sqrt{2}gl}{V} \)
\( \displaystyle T = \frac{\sqrt{2}V}{2g}+\frac{\sqrt{2}gl}{2gV} \)
\( \displaystyle = \frac{\sqrt{2}}{2}\left(\frac{V}{g}+\frac{l}{V}\right) \)
(5) 衝突した位置の$x$座標を$X$、$y$座標を$Y$とおきます。$X$については、(2)で球Aの進んだ距離を\( V\cos45°T \)とおきましたが、これがまさに$X$の値となります。(4)で$T$の式を求めましたから、これを代入すると、
\( \displaystyle X = (V\cos45°)・\frac{\sqrt{2}}{2}\left(\frac{V}{g}+\frac{l}{V}\right) \)
\( \displaystyle = \frac{V}{\sqrt{2}}・\frac{\sqrt{2}}{2}\left(\frac{V}{g}+\frac{l}{V}\right) \)
\( \displaystyle = \frac{1}{2}\left(\frac{V^2}{g}+l\right) \)
球Aの$y$座標については、鉛直方向の運動になりますから、(1)の解説中にあった赤枠内の2番目の公式を利用して、
\( \displaystyle Y = (V\sin45°)T-\frac{1}{2}gT^2 \)
(4)で求めた$T$の式を代入して、
\begin{eqnarray} &&\frac{V}{\sqrt{2}}・\frac{\sqrt{2}}{2}\left(\frac{l}{V}+\frac{V}{g}\right)\\ &&~~~~-\frac{1}{2}g\left\{\frac{\sqrt{2}}{2}\left(\frac{l}{V}+\frac{V}{g}\right)\right\}^2\\ \end{eqnarray}
これを計算して整理すると、\( \displaystyle \frac{1}{4}\left(\frac{V^2}{g}-\frac{gl^2}{V^2}\right) \)
答え.
(1)
(ア) \( \displaystyle \frac{V}{\sqrt{2}g} \)
(イ) \( \displaystyle \frac{V^2}{4g} \)
(2)
\( \displaystyle \frac{\sqrt{2}l}{V} \)
(3)
同じ
(4)
\( \displaystyle \frac{\sqrt{2}}{2}\left(\frac{V}{g}+\frac{l}{V}\right) \)
(5)
(ア) \( \displaystyle \frac{1}{2}\left(\frac{V^2}{g}+l\right) \)
(イ) \( \displaystyle \frac{1}{4}\left(\frac{V^2}{g}-\frac{gl^2}{V^2}\right) \)