この問題のポイント
核反応で起こったエネルギーはE = mc2を利用して考えよう!
核反応でもエネルギー保存の法則が適用される点も注意!
(1)中性子や陽子などが核反応を起こして原子核になったとき、その質量が減少します。この現象のことを質量欠損といいます。
今回の実験では、陽子をリチウム原子核に当てた、つまり合わせたら、2個の$α$粒子が生まれたということなので、陽子とリチウム原子核との合計と$α$粒子2個の間で差が生じていることになります。計算すると、
\( \small{1.67×10^{-27}+11.65×10^{-27}-2×6.65×10^{-27}} \)
\( \small{= (1.67+11.65-2×6.65)×10^{-27}} \)
\( \small{= 0.02×10^{-27}} \)
有効数字は2けたで答えるという条件なので、そのように変換しましょう。
\( 0.02×10^{-27} \)
\( = 2.0×10^{-2}×10^{-27} \)
\( = 2.0×10^{-29} \)
よって、\( 2.0×10^{-29} \)kgとなります。
(2)(1)でなくなった分の質量が求まりましたが、そのなくなった質量はどうなってしまったのかというと、エネルギーとなってしまったのです。それを求める問題ということですね。
質量がエネルギーに変わるときに使われる公式はこれです。
\( E = mc^2 \)
($E$:エネルギー(J)、$m$:質量(kg)、$c$:光速(m/s))
この公式にあてはめれば簡単ですね。
\( E = 2.0×10^{-29}×(3.00×10^8)^2 \)
\( = 2.0×10^{-29}×9.0×10^{16} \)
\( = 18.0×10^{-13} \)
有効数字は2けたで答えますから、
\( 18.0×10^{-13} \)
\( = 1.8×10×10^{-13} \)
\( = 1.8×10^{-12} \)
つまり、\( 1.8×10^{-12} \)Jですね。
(3)エネルギー保存の法則というのがありますが、これは核反応についても一緒です。
今回の実験でいうと、陽子がリチウム原子核に当たるまでに進んでいたときのエネルギーと、リチウム原子核に当たって質量欠損で生じたエネルギー((2)で求めたエネルギー)の2つの合計が、そのまま$α$粒子の運動エネルギーに使われたので、その運動エネルギーに等しいということになります。
まず、陽子がリチウム原子核に当たるまでに進んでいたときのエネルギーをJに変換して、(2)で求めたエネルギーの単位と統一しておきましょう。\( (1.10×10^6×1.60×10^{-19}) \)Jとなります。あとでいろいろ計算しないといけないので、そのときにまとめて計算することにしましょう。
これと(2)で求めたエネルギーの合計が、2個の$α$粒子の運動エネルギーに等しいので、1個の$α$粒子の運動エネルギーを$K$とすると、
\begin{eqnarray} &&\small{K = \frac{(1.10×10^6×1.60×10^{-19})+1.8×10^{-12}}{2}}\\ &&\small{= \frac{1.76×10^{-13}+18×10^{-1}×10^{-12}}{2}}\\ &&\small{= \frac{1.76×10^{-13}+18×10^{-13}}{2}}\\ &&\small{= 9.88×10^{-13}} \end{eqnarray}
そして、運動エネルギーといえば、
\( \displaystyle K = \frac{1}{2}mv^2 \)
という公式を思い出すはずです。これを使えば、速さが求まりますからこれを利用しましょう。代入していくと、
\begin{eqnarray} &&9.88×10^{-13} = \frac{1}{2}×6.65×10^{-27}×v^2\\ &&2×9.88×10^{-13} = 6.65×10^{-27}×v^2\\ &&v^2 = \frac{2×9.88×10^{-13}}{6.65×10^{-27}}\\ \end{eqnarray}
これの平方根を計算していきます。割り切れない数になるので、近似値をとる形になりますが、それで計算すると\( v ≒ 1.7×10^7 \)m/sです。
答え.
(1)\( 2.0×10^{-29} \)kg
(2)\( 1.8×10^{-12} \)J
(3)\( 1.7×10^7 \)m/s