この問題でおさえておきたいこと
〈it+V+that ~〉の構文を和訳するときはthat以降から訳すべき!
itが構文の一部ではなく前に書かれた内容を指すこともあるので注意!
解答(例)
(1)さまざまな必要性を満たすために、さまざまな意思伝達の形式がいろいろな方法で使われうるということは正しい。(たしかに、さまざまな必要性を満たすために、いろいろな意思伝達の形式が多様な方法で使える。)
(2)合衆国やカナダの労働者がほとんどのヨーロッパ人より多くの時間を仕事に費やし、そして日本人がポルトガル人よりもっと長く、つまり1年間に2100時間以上働いているようだ。
(3)私たちをほかのすべての動物と異なるようにした発達の主な要因なのは、おそらく、お互いに意思疎通したいという衝動と、意思疎通をするための能力の発達であろう。(お互いに意思疎通したいという衝動と、意思疎通をするための能力の発達こそが、おそらく私たちをほかのすべての動物と異なるようにした発達の主な要因だろう。)
(4)それ(人が死ぬこと)は不思議な出来事であり、出来事の不思議な定めである。つまり、それ(人が死ぬこと)は正確には理解されていない定めなのである。
解説
(1)下線部の英文の構造を図示すると、このような形になります。
この文より前には何も書かれていませんから、この文の最初にあるitは何かを「それ」と指しているわけではありません。なので、このitは仮主語で、本当の主語(真主語)は文の後ろにあるとわかります。実際、It is trueの後にthat S V ~という形になっていますから、このthat以降が真主語で、thatは「~ということ」という意味になるわけです。
that以降の部分については、can be usedと受動態が使われている部分があり、「使われることができる」という意味なのでこれがVとなります。よって、そのcan be usedより前の部分がSということになります。
in various waysの部分はどう使われることができるのかを修飾している部分です。to satisfyという不定詞も「~するために」という意味をあらわし、この部分以降もどう使われることが」できるのかを説明しています。
ちなみに、この文の次にButとありますが、it is true that ~は直後のbutとセットになると「たしかに~だが」という譲歩の意味になります(直訳は「~ということは正しい。だが…」となるので)。これを利用して訳してもいいでしょう。
解答のチェックポイント
- itは仮主語なので訳さず、that以降の部分を主語として訳しているか(または「たしかに~だ」という譲歩の意味で訳しているか)
- that以降の部分ではvariousからcommunicationまでの部分がSでcan be usedがVという骨格になっていることがつかめているか
- to satisfyという不定詞は「~するために」など目的をあらわす意味の不定詞として訳しているか
(2)下線部の英文の構造を図示すると、このような形になります。
it appears that ~は「~ということのようだ」という意味の表現です。この表現の後には〈S+V ~〉という形がつづきます。実際、put in ~(~を費やす)があるので、これがVの部分です。よって、これより前の部分がSの部分で、in the U.S. and Canadaはworkersを修飾しているということになります。
この〈S+V ~〉の後にandがあり、別の〈S+V ~〉という形がつづいていますね?1つ目の〈S+V ~〉では労働時間の比較をしていましたが、2つ目の〈S+V ~〉でも労働時間を比べています。似た話題のことを述べているので、この部分もit appears that ~で「~のようだ」と説明されている部分とわかります。
ちなみに、2つ目の〈S+V ~〉にあるevenは「もっと、さらに」という意味で比較級を強調しています。また、最後にあるmore than 2,100 hours a dayという部分は、2つ目の〈S+V ~〉で述べていることの補足説明、つまり日本人がポルトガル人よりどれだけ長く働いているかという部分を説明している部分です。
ところで、it appears that ~のような成句的な表現として、ほかにもこのようなものがあります。すべてthatの後ろは〈S+V ~〉の形がつづきます。覚えていないものがあったとしたら、ぜひ覚えましょう。
- it seems that ~:~のように思われる
- it happens that ~:たまたま~である
- it turns out that ~:~だとわかる
- it follows that ~:~ということになる
解答のチェックポイント
- この文全体の訳を「~のようだ」などの形で終えているか
- 「~のようだ」と推測していることとして、合衆国・カナダとヨーロッパの労働時間の比較と、日本人とポルトガル人の労働時間の比較の、2つの内容があるとわかるように訳しているか
- more than 2,100 hours a dayという部分は、日本人とポルトガル人の比較をしている部分の補足説明であることがわかるように訳されているか
(3)下線部の英文の構造を図示すると、このような形になります。
この文のitは何かを指し示しているわけではありません。itより後ろには「私たちの衝動」とありますが、この文より前では「人間はおしゃべりな生き物だ」という内容のことが書かれており、そのどの部分も「私たちの衝動」ということとつながらないからです。
この文はよく見るとit is ~ that …の形になっていますが、ここでは「…なのは~だ」「~こそ…だ」とit isとthatの間にはさまれた部分を強調する強調構文として使われています。
it isとthatの間が長くなっていますが、andがあるのでそこで区切るとour urge(私たちの衝動)とgrowing ability(能力の発達)が核になっていることが見えるでしょう。それぞれについて、後ろにくっついているto不定詞が「~するための」という意味で修飾しているわけです。do so(そうする)というのは、communicate with each other(お互いと意思疎通する)を指しています。
that以降の部分では、「主要な要因だ」と述べ、何についての要因かをin the development(発達における)が説明しています。ただ、何の発達かがわかりませんから、それをthat made us以降で説明しているわけですね。なのでthat made us …のthatは関係代名詞として使われています。
解答のチェックポイント
- この文全体を「…なのは~だ」「~こそ…だ」など強調構文の形で訳しているか
- 強調されているものは「衝動」と「能力の発達」の2つであることが示されているか
- in the developmentの部分はthe chief factorを、that made us以降の部分はthe developmentを修飾していることがつかめているか
〈補足〉
(1)と(3)で日本語に訳した文はどちらもit is ~ that …の形をしていますが、なぜ(3)のほうの文だけが強調構文といえるのかわかりますでしょうか?
強調構文とは、ふつうの文のうちの一部分を強調したいときに使う構文です。ということは、強調構文では、it isとthatを取り除いても、きちんと文として成り立つことになります。(3)で訳した文で、it isとthatを取り除くとこうなります(長いので最後のほうは省略)。
Our urge to communicate with each other and growing ability to do so was probably the chief factor …
日本語にすると「お互いに意思疎通したいという衝動と、意思疎通をするための能力の発達がおそらく主な要因だろう」となりますが、やはりきちんと意味が通っています。一方、(1)で訳した文で同じようにするとこうなり、きちんとした文になりません(最後のほうは省略)。
True various forms of communication can be used in various ways …
英語だとピンとこない人でも、日本語にすると「正しい、さまざまな意思伝達の形式がいろいろな方法で使われうる」となり、おかしな形になっていると気づくでしょう。このように、it isとthatを取り除いても、きちんと文として成り立つかどうかが判断のカギとなります。
ただ、英語が苦手な人にとっては、文が成り立つかどうかの判断も難しい場合もあるかもしれません。その場合は、強調構文であろうとなかろうと、it is ~ that …の形の文を日本語訳するときは、that以降の部分を先に訳してから、it isとthatの間を次に訳すという手順をふむといいでしょう。
(4)下線部の英文の構造を図示すると、このような形になります。
この文には;(セミコロン)が使われています。セミコロンは前後の文に関連性があることを示す記号で、「つまり」「すなわち」「そして」など接続詞の意味を補うような役割を果たします。訳すときもそのような意味を補うとよいでしょう。
その記号があるということは、そこでいったん文が区切れますから、そこより前の文を見てみましょう。itは前に書かれたことについて「それ」と指しています。ここでは、People die、つまり「人が死ぬこと」を指しており、それをstrange event(不思議な出来事)と言っているわけです。
次の文ですが、一見するとit is ~ that …という形になっています。that以降の部分はisやunderstoodがあってVはわかるのですが、Sがなさそうです。さっきの〈補足〉で説明のとおりに、it isとthatを抜くときちんとした文ができるかもしれませんね。実際に取り除いてみると、
An order is not accurately understood
なんとなくきちんとした文のように見えます。しかし、日本語に直してみると、is understoodという〈be動詞+過去分詞〉の間にnotとaccurately(正確に)があるので、「定めは正確に理解されていない」となり、さっきまでの人の死についての話題から定めの話に変わってしまい、話の流れが悪くなります。
ということは、強調構文として考えるのではなく、itは「それ」と何かを指しているとするほうが適切です。「それは定めだ」ということだと、セミコロンより前でもa strange orderと書かれていたこととあわせると、このitも「人が死ぬこと」を指しているとなり、話の流れもよくなります。
そして、「それは定めだ」と言われてもどういうことなのかピンときませんから、thatについては関係代名詞ということになり、後ろからどんな定めなのかを説明しているとわかります。英語の文章は文脈が大切なので、構文などにとらわれず、まずはitを「それ」とみなして解釈してみて意味が通じるかなどを考えてみましょう。
解答のチェックポイント
- itをすべて「それ」、または指し示している内容である「人が死ぬこと」としてとらえているか
- セミコロンを「つまり」「すなわち」などの意味としてとらえているか
- that is not accurately understoodのthatを関係代名詞ととらえ、orderを修飾していることがつかめているか
全文訳
(1)たしかに、さまざまな必要性を満たすために、いろいろな意思伝達の形式が多様な方法で使える。だが、特定の形式のほうが他の形式よりもいくつかの処理をするのが得意であるということも正しい。写真は世界の目に見える側面を表現するのが得意である。
(2)EC域外の国々の労働時間はそのまま比較することができるというわけではないかもしれないが、合衆国やカナダの労働者がほとんどのヨーロッパ人より多くの時間を仕事に費やし、そして日本人がポルトガル人よりもっと長く、つまり1年間に2100時間以上働いているようだ。
(3)人間は、これまで私たちが認識している限りでは、おしゃべりな生き物であり、いつもそうであり続けた。私たちをほかのすべての動物と異なるようにした発達の主な要因なのは、おそらく、お互いに意思疎通したいという衝動と、意思疎通をするための能力の発達であろう。
(4)人は死ぬ。それ(人が死ぬこと)は不思議な出来事であり、出来事の不思議な定めである。つまり、それ(人が死ぬこと)は正確には理解されていない定めなのである。だれも本当に死とは何かということを知らない。みんなが生涯を通じて死について話す。みんなが死に、沈黙していくのである。