この問題でおさえておきたいこと
無生物主語の文を訳すときは、主語を「~によって」など副詞っぽく訳して、目的語の部分を「~は」と主語っぽく訳す!
解答(例)
(1)1790年に、はじめてアメリカの著作権法が議会を通過したことによって、文学は財産となり、それゆえに、職業としての著述業がアメリカの作家にとっての一つの可能性となった。
(2)一つの言語を習得することによって、学習者は、価値がある多くの文学や現在の出版された多くの刊行物を利用することができるようになる。
(全文訳は最後に載せています)
解説
無生物主語、つまり人間など生き物ではないものが主語になっている文は、そのまま日本語に直訳すると不自然な感じになることが多いです。そのような文は、以下のことを意識して訳すと自然な日本語になります。
- まず直訳する
- 無生物である主語を「~によって」「~ためには」「~なので」「~によると」など副詞っぽく訳す
- 目的語(「~を」「~に」の部分)にあるものを「~は」と主語のように変える
- それに応じて動詞を自然な言い方に変える
(1)この英文の構造を図示すると、このような形になります。
passageとは通過を意味し、of the first American copyright lawが何の通過かを示しています。「はじめてのアメリカの著作権法の通過」ということになりますが、法律が「通過した」とは、つまり議会で可決されたということですから、「はじめてアメリカの著作権法が議会で通過したこと(可決したこと)」とすると、より文意が通じやすいでしょう。
had madeのあとはliterature propertyとなってますが、「文学財産を作った」というのはおかしいですし、「文学に財産を作った」というのも意味が通りません。なので、このmadeは後ろにOとCをとって「OをCにする」という意味を表すと考え、「文学を財産にする」ととらえるといいでしょう。
この後に、過去完了形がまたありますから、この文は2つのVがあると考えます。さっきは「OをCにする」ととらえましたから、同じ形になるのではないかと考えて文を見ると、OとCは上の図のようになると考えることができます。(OとCの切れ目は上の図のところで切れるとしか考えられません)
よって、この文を直訳すると、
「1790年に、はじめてアメリカの著作権法が議会で通過したことは文学を財産にし、それゆえに、職業としての著述業をアメリカの作家にとっての一つの可能性にした」
となります。これを自然な日本語に変えていきます。
まず、主語の部分「はじめてアメリカの著作権法が議会で通過したことは」を変えましょう。要するに、この文は著作権法の成立が原因で起こった文学の変化を述べた文ですから、原因であることがわかるようなニュアンスに変えましょう。「はじめてアメリカの著作権法が議会で通過したことによって」などがいいでしょう。
次に、目的語の部分です。それは、「文学を」と「職業としての著述業を」の2つですから、これを「文学が」「職業としての著述業が」とします。
最後に、動詞を自然な日本語に変えるわけですが、これは文学の変化を述べた文ですから、「文学が財産になる」「著述業が可能性になる」とすれば意味が通じやすくなりますね。そのように変えた文が、上の解答(例)に書いた文です。
解答のチェックポイント
- 「文学」と「職業としての著述業」が主語となっている日本語訳になっているか
- The passage of ~の部分を単に「~の通過」とせずに「~が議会で通過した(可決された)こと」のように文意がわかりやすく訳されているか
- 著作権法の可決が原因であるというニュアンスが示されているか
- 著作権法の可決による変化だとわかるように動詞の部分の日本語訳がされているか
(2)下線部の英文の構造を図示すると、このような形になります。
makesは動詞なんですから、これがVであり、そこがVとわかったんですから、それより前の部分全部がSということになります。ですから、この文の主語は「(一つの)言語の習得」です。(1)のように、もっと文意が通じやすいようにするならば、「(一つの)言語を習得すること」とするといいでしょう。
そして、available(利用できる)は、available to ~で「~に利用できる」という意味となり、誰に利用できるようになるかがつづきます。この文の場合は、the learnerとあるので、「学習者」に利用できるというわけです。ただ、ここまでの部分では「何を」利用できるのか、つまり目的語の部分がわかりません。
よく見ると、つづきにa great deal of worthwhile literature(価値がある多くの文学)とmany current publications(多くの現在の出版物)があります。利用できるものとして考えられるのはこれですね。〈make+O+C〉で「OをCにする」という意味になりますが、この部分が少し長くなってしまっているので、この問題ではOがCの後ろに来ているんです。
こういう文構造なんで、直訳すると、
「一つの言語を習得することは、価値がある多くの文学や多くの現在の出版物を、学習者に利用できるようにする」
です。これを自然な日本語にしていきます。
この文はだいたいの意味としては、言語を習得することによって得られる効果について述べていることがわかりますね?ですから、主語の部分を「このおかげで効果を得られるんだ」ということが伝わるようなニュアンスの表現に変えましょう。「一つの言語を習得することのおかげで」とか「一つの言語を習得することによって」とかにするといいでしょう。
次に、目的語の部分を主語っぽく変えるわけですが、この問題では「学習者」という人がいます。人がいる場合は、そちらのほうを主語っぽくすると、より自然な日本語となります。なので、この問題ではこちらのほうを「学習者が」と主語っぽくしましょう。
そして、動詞を自然な日本語に変えるわけですが、「一つの言語を習得することのおかげで」「一つの言語を習得することによって」に対応するように変えると、「利用できるようになる」がやはり自然でしょう。さらに、さっき「多くの現在の出版物」ととらえた部分ももう少しわかりやすい日本語に変えたのが、上の解答(例)に書いた文です。
解答のチェックポイント
- 「学習者」が主語となっている日本語訳になっているか
- 利用できるものが「文学」と「出版物」の2つであることが示されているか
- 言語の習得による効果であるというニュアンスが示されているか
- 動詞の部分は「~になる」など、自然な日本語になっているか
全文訳
(2)今日では、人々が外国語を学ぼうとするときは、話すことだけに関心があるというわけではない。一つの言語を習得することによって、学習者は、価値がある多くの文学や現在の出版された多くの刊行物を利用することができるようになる。